国道462号線から川を渡った向こう側にある『みかぼ味噌店』さんは、創業40年以上のお味噌屋さん。現在は3代目の髙橋富久さんがお祖父様から続いたこだわりの製法でお店を守っています。
その製造過程がほとんど手作業。薪の火で大豆を蒸す、昔ながらの製法を守る
――「みかぼ味噌」は、地元神流町の「あわばた大豆」を中心とした国産大豆と大麦だけを使った無添加の田舎みそ。一般店で売っているものとくらべると香りが強いですよね。
富久さん 麹とか酵母菌による香りもありますが、ひのきの樽で仕込んでいたりするのも影響があるのかもしれません。
――大豆や麹の粒がすりつぶされている「こし味噌」、大豆や麹の粒がそのまま残っている「粒味噌」がありますね。
富久さん 「こし味噌」はまろやかで濃厚な風味が特徴。「粒味噌」は思いのほかさらりとした風味です。
味とか香りとかはどちらも変わらないんですが、大豆粒が残っているほうが、やっぱり食べ応えというか、粒の食感は楽しめますよね。
お母さん 大豆粒が丸々残っている「粒味噌」っていうのが少なくて、全国的にも希少なんです。大豆の粒の中にまで味がしみているから、その粒だけでも食べられる(笑)この粒味噌を探してうちにたどり着いて来てくれる人も多いです。
――お味噌造りはどのように?
富久さん ほとんど手でやっています。「こし味噌」を作るのに大豆を潰す時と、麹と大豆を混ぜる攪拌の時くらいかな、機械を使うのは。
樽にのせる重しの石(1つ20kgくらい)を一樽に30~40個くらいのせるのも手作業です。腰痛との戦いですね。手を滑らせて石を足元に落とし、ヒヤッとしたこともあります。
――昔ながらの製法で、薪の火で大豆を蒸しているのも特徴ですね。その作業は朝から?
富久さん 朝とっても早いです。2時半から3時には起きて、3時半ごろから火を入れます。釜から蒸気がぶわ~っとあがるまでになってから、豆や麦を入れるんです。
お母さん 蒸し上がるまで4時間くらいかかるんですよ。
富久さん 冬場だと寒さもあって、4時間じゃ足らないですね。
お母さん 毎日やるわけではなくて、まとめてやるんですけどね。
富久さん 蒸し器から出すときは迫力ありますよ。
お母さん 蒸し上がった豆を麹とまぜる作業もね。
学生とのコラボが実現!大いなる包容力に今後の可能性が広がる
――この「みかぼ味噌」を使った、オススメのお料理を教えて下さい!
富久さん 野菜をたくさん煮込むとおいしいですね。鍋物なんかもいい。
オレは自分で釣った魚をさばいてこの味噌と混ぜて「なめろう」にしたりしてます。ご飯にのっけて食べるととっても美味しいんです。
お母さん 山梨県のほうとう屋さんがうちの粒味噌を使ってくれていて、「お客様から、味噌の大豆の粒が喜ばれているんです」と言われますね。煮込むと風味が増してさらにおいしくなると思います。もちろんみそ汁やそのまま食べるのも良いですよ。
――山梨県のお店ともお取引があるのですね!すごい!!外部との接点といえば、今年、関東学園の学生さんとのコラボ商品もあるのだとか。
富久さん 「かんなみそ」っていう万能味噌ソースです。関東学園大学RCVのメンバーさんがうちのみかぼ味噌と神流町のじゃがいも焼酎を使って万能味噌ソースを考案してくれました。
※関東学園大学RCV:群馬県内を中心に、地域と協力しながら地域活性を目指して様々な活動に取り組んでいる関東学園大学のサークル。商品開発・農業支援・イベント支援など現地の方と協力してさまざまなプロジェクトを遂行している。
富久さん 後は「みかぼ味噌を使ってドリア作ってみたよ」と教えてくれた友人もいました。
お母さん チーズとの相性は良いですね。クリームチーズとも合いますね。
富久さん 商工会の青年部主催イベントでは、じゃがいも料理のソースに応用して販売したりもしましたね。好評ですぐ売り切れちゃいました。
――「みかぼ味噌」の大いなる包容力!今後の可能性、広がりますね。
お母さん 色々やってみると、その都度可能性に気づくんですよね。
富久さん 機械とか必要になってくるので、自分の所だけじゃできない、っていうのはありますね。やはり「他と交わる・絡む」ことの効果を感じます。
そういった加工品を入口にして「みかぼ味噌」を知っていただき、「この味噌を食べてみたい」と買いに来てくれる人も多くなるのを期待します。
次世代に残る「みかぼ味噌」を目指して
――富久さんは三代目とのことですが、この「みかぼ味噌」を今後どう継承していこうとお考えでしょうか。
富久さん 高校生くらいの時から手伝ってはいたんですが、本格的に自分が代表になったのは3年前。今後どうしていこうか、とか、まだそこまで深くは考えたことないんですけど…神流名産というのもあるから、次世代に残せるようにはしていきたいですね。
――お味噌造りを通じて、成長したことや学んだこと・気づいたことはありますか?
富久さん 自分自身はあまり変わってないかな(笑)製法もほとんど変えてないし。
でも手伝っていた時と、自分で作った物を自分で売る、っていうのは違いますよね。販売すること自体が経験になる。買ってもらった人に直接感想を聞けるのも、作り手としては嬉しいです。
町のひとに「うまくなったなあ。なんか変えたんかい」と言われたのは嬉しかったですね。
大豆を水につける時間をちょっと工夫してみたくらいなんですけど、そういう工夫をわかってもらえると挑戦してみてよかった、と思いますね。
そうそう、その工夫の副産物としては、製造過程でできる「たまり(醤油)」が増えたんです。
同じ町内の『まるはちカフェ(神流町万場)』さんがうちのたまり醤油と合わせてジェラートを開発してくれているので、ぜひそちらも召し上がってみて下さい!
――なんだかもう、「みかぼ味噌」が可能性のかたまりに見えてきました!そんな「みかぼ味噌」はどこで手に入りますか?
富久さん みかぼ味噌店(神流町麻生)でも店頭販売していますが、町内の「道の駅 万葉の里」、藤岡市の「道の駅ららん藤岡」、長井屋製菓さん(藤岡市坂原)でも取り扱っていただいています。
基本手作業で作っているものなので大量生産できず、いつでも必ず手に入るものではないのですが、見つけた時にはぜひお手に取って下さいね。
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