『まるはちカフェ』は、都内で就職したオーナーが地元に戻ってきて、実家の衣料雑貨店「まるはち」の一部を改装して開業。赤じゃがやあわばた大豆といった、神流の特産野菜を使ったメニューが並ぶ、他にはない唯一無二のお店です。オーナーの黒澤さんに、神流町の特産品を盛り上げたいという思いや、イベントを主催されているトレイルランニングについてなど、多岐に渡ってお話しいただきました。
神流町の特産品をメニューに入れたカフェを作りたかった
-神流町に戻ってきて、このカフェを開いたそうですが、なぜ戻って来られたのでしょうか?
黒澤 あまり前向きな理由ではないです…サラリーマンが向いてないと思って。
独立したいなと思っていたときに、勢多農林高校の生徒さん達が神流町特産の「あわばた大豆」の研究をされていて、その試食をする機会があって、こういう特産品があれば、カフェができるかなと思ったのがきっかけです。
「あわばた大豆」はその時初めて食べたんですけど、地元でも知らない人が多くて、再発見という形で注目されていた時期でした。
-勢多農がなぜ「あわばた大豆」を研究されていたか、ご存じでしたか?
黒澤 恐竜センターとか、旧中里エリアには勢多農のOBが多いんです。勢多農生がOBとのつながりがあって、最初は神流町特産の赤じゃがの研究で来町していたそうです。その過程で農家さんの畑で細々と作られていたあわばた大豆が見つかって。中里の数軒の農家さんだけが細々と作り続けていたお豆で、町全体で昔から作っていたわけではなかったんですって。
それで、見た目も特徴的で、こんな大豆があるのかと先生が気づかれて、これをちゃんと栽培しようということになったと聞きました。この15年くらいでようやく形になってきたんです。
-昔からの伝統的な農産物かと思っていましたが、違うんですね。
黒澤 そうなんです。ここ最近、ちゃんと地域の特産品にしようと、計画的に作られるようになりました。
-それを提供できるカフェを作りたいという思いがあったんですね。
黒澤 特産品を気軽に食べられる場所がないというのは、イベントの手伝いに参加した時などに常々感じていて。そこにあわばた大豆の存在が現れたというわけです。
私はこれまで飲食関係の仕事に携わっていたわけではなかったのですけど。
-以前はどんなお仕事をされていたんですか?
黒澤 メーカーの営業職をしていました。
「あわばたきなことたまりのジェラート」からスタート
-そうなんですね。カフェを立ち上げるにあたって、お客さんに届けたい思いとは、どんなものだったのでしょうか?
黒澤 特産品を食べてもらいたいというのが一番です。それまでは気軽に特産品を食べられる場所がなく、特産品はあったけれど調理前の状態で、気軽には食べられなかったので。お店をつくったきっかけもそこから始まっています。
特産品を活用したメニューは、まずジェラートから作りました。
レシピは元々勢多農生が作ったものがあり、たまりときな粉でジェラートを試作したものを食べさせてもらって。これはいいということで、お店で出せるよう、機械を導入して本格的に作るようになりました。
最初は伝田郷の桜井味噌さんから、あわばた大豆のたまりをもらって作っていました。今はみかぼ味噌さんのたまりを使っています。
-たまりのジェラートは珍しいですよね。
黒澤 お醤油やお味噌を使った甘じょっぱい系は他にもあるんですけど、たまりを使ってきな粉と合わせているのは結構特徴的だと思います。
これも勢多農生達が考えたレシピで、きな粉をかけることで食べやすくなるし、香りもよくなる。きな粉も自家製です。
-売れ行きはいかがですか?
黒澤 夏場はよく売れますね。季節問わず売れますが、5月から夏場にかけては毎日機械フル回転で。
-その頃は観光客も増えますよね。
黒澤 そうですね。鯉のぼり祭りとか、神流川の川遊びとか。
-神流町を楽しむには、どの季節がベストですか?
黒澤 イベントに関係なく来るなら春と秋がおすすめです。新緑と、紅葉。
-釣りで神流町に来る方も多いですよね。
黒澤 鮎釣りの時期は6月の解禁以降ですね。
釣りは本気の人から、ちょっと楽しみたい人までさまざまいますね。
最近は、自転車とかトレラン※、バイクの人も多いです。
トレランはこれまで秋中心だったので、今後は春にもやっていこうと準備しているところです。私もトレランのイベントの企画に携わっているので。
※トレラン…トレイルランニング。林道、砂利道、登山道など、未舗装路を走るアウトドアスポーツ。
カフェをいろいろな用途で使える場所にしたい
-まるはちカフェさんの、こちら側のスペースは、リニューアルされたのですか?
黒澤 元々あったところを直して、リノベーションしています。レンタルスペースとして提供しようと思っています。カフェの延長という形ではあるんですけど。この周辺には今、飲食関係なく長時間使えたり、時間を過ごせる場所が無いので、そういう場所を作れたらと。カフェも飲食の提供はもう目一杯なので、席を増やすのではなく、飲食と関係なく使えるところを作りたかったんです。
カフェからも一応、通り抜けはできます。時間制で借りていただいて、イベントに使ってもいいし、近所で買ったものや当店で買ったものをミックスしてここで一緒に食べてもいいし。そんなふうに自由に使っていただけたらと思っています。
-利用時の価格設定はどのような感じですか?
黒澤 大体、1時間300円くらい、半日700円くらいを考えています。建物としてはできているんですけど、まだ本格的には初めていなくて。建物の中を仕上げているところです。
-神流町という土地柄は、このエリアにぎゅっといろんなお店が集約している傾向がありますよね。
黒澤 そうですね。いろんなことをやらなきゃいけなくて。
昔は各地に商店があったのですが、最近なくなってきていて、よりその傾向が強くなっていると思います。
-取り扱い商品がどんどん増えていきますね。
黒澤 そうですね。
-ご実家の洋品店を継ごうとは思わなかったのですか?
黒澤 やっぱり人口が減ってくれば大変になるなというのはわかっていたので。でも「まるはち」という屋号は残したかったので、「まるはちカフェ」になりました。
-ちなみに、なぜ「まるはち」なのですか?
黒澤 八右衛門という人がご先祖様で、何代目八右衛門というふうに脈々とこの名前が引き継がれていて。昔から、丸に八という意匠でやってきました。江戸時代からの屋号で代々のトレードマークです。
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